2026年11月01日

睡眠時無呼吸症候群という病名が広く知られるようになり、CPAP(持続陽圧呼吸療法)で治療を続けている方も多いのではないでしょうか。
一方で、「CPAPをうまく始められなかった」「続けるのが難しい」「使っているのに十分に良くならない」という方もおられます。
そのような方のための新しい治療法が、「舌下神経電気刺激療法(インスパイア療法)」です。日本では2021年6月から保険適用となっています。
どんな治療法?
舌を動かす神経(舌下神経)を、電気で刺激する治療法です。体内に小型の刺激装置とセンサーを埋め込み、呼吸のリズムに合わせて刺激を送ります。
息を吸うタイミングで舌の付け根(舌根部)が前に動き、空気の通り道が広がります。これにより、睡眠中の無呼吸やいびきの改善を目指します。
CPAPのようにマスクを着ける必要がないことが、大きな特徴です。
対象となる方
すべての睡眠時無呼吸症候群の方が受けられるわけではありません。主な条件は次のとおりです。
- 18歳以上
- 無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- CPAPで十分にコントロールできない、または続けるのが難しい
- BMIが30未満
- 中枢性無呼吸の割合が25%以下
さらに、薬で眠った状態でのどを内視鏡で観察する検査(薬物睡眠下内視鏡検査:DISE検査)を行い、睡眠中に気道がどのように塞がるかを確認します。軟口蓋が全周性に閉塞するタイプではないかなど、専門的な評価が必要です。実際に治療を受けられるかどうかは、これらを踏まえて専門医が判断します。
治療の流れ
- 検査:専門の医療機関で検査を行い、治療の適応があるかを判断します。
- 手術:適応があれば全身麻酔で手術を行い、鎖骨付近やあごの下などに刺激装置やセンサーを埋め込みます。
- 刺激の開始:傷口が落ち着くまで、30日以上を目安に待ってから刺激を始めます。
- 調整:状態を確認しながら、刺激の強さを調整していきます。適切な設定が決まるまで、一般的に半年から1年ほどかかることがあります。
費用について
保険診療の対象です。装置そのものは高額ですが、所得などの条件に応じて高額療養費制度を利用できる場合があります。実際の自己負担額は、治療を受ける医療機関や加入している健康保険にご確認ください。
福岡・九州で治療を受けるには
九州内では、福岡大学病院、産業医科大学病院などが対応施設として挙げられています。受診を検討される方は、各施設に最新の実施状況や受診方法を問い合わせてみてください。
ひとりで悩まず、ご相談ください
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、日中の眠気や、高血圧などの生活習慣病につながり、毎日の生活の質を大きく損なうおそれがあります。
CPAPがうまくいかず、悩んでいる方もおられると思います。舌下神経電気刺激療法は、そのような方にとっての新たな選択肢です。あきらめずに、まずは専門医に相談してみてはいかがでしょうか。