2026年6月01日

「何もないのに焦げ臭いにおいがする」
「タバコの煙のような臭いを感じる」
「家族には分からない薬品臭が気になる」
このような症状で悩まれていませんか?
実際には周囲に匂いが存在しないのに、何らかの匂いを感じたり、本来とは違う匂いとして感じてしまう状態を「異嗅症(いきゅうしょう)」といいます。嗅覚障害の一種で、近年は新型コロナウイルス感染後の後遺症として知られるようになりましたが、実はストレスや自律神経の乱れが関係している場合も少なくありません。
「気のせいかな…」と一人で悩まれている方も多い症状ですが、耳鼻咽喉科で原因を調べることで改善のきっかけが見つかることがあります。
異嗅症とは?
異嗅症には、大きく分けて次のようなタイプがあります。
- 実際には匂いがないのに匂いを感じる
- 本来の匂いと違って感じる
- 良い匂いが不快な臭いに感じる
感じる臭いとしては、
- 焦げ臭い
- タバコ臭い
- 生ゴミのような臭い
- 薬品臭
- 金属臭
などが比較的多いとされています。食事の味わいにも影響するため、「食欲が落ちた」「食事が楽しめない」と感じる方もおられます。
原因はさまざまです
異嗅症の原因は一つではありません。代表的なものとして、以下が挙げられます。
1.慢性的な鼻の病気
慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによって、鼻の奥にある嗅覚の細胞や神経が障害されることで起こります。
鼻づまりや後鼻漏(鼻水が喉に落ちる症状)を伴うこともあります。
2.風邪や新型コロナ後の後遺症
ウイルス感染によって嗅覚細胞がダメージを受け、その回復過程で神経がうまく働かず、匂いを誤認識することがあります。
「匂いが戻ってきたと思ったら変な臭いに感じる」という経過は比較的よくみられます。
3.頭部外傷の後遺症
転倒や交通事故などで頭を強く打った後に起こることがあります。嗅神経が損傷し、その後の再生過程で異常な匂い感覚が出現する場合があります。
4.神経の病気
まれではありますが、パーキンソン病やアルツハイマー病の初期症状として嗅覚異常が現れることもあります。
5.ストレス・自律神経の乱れ
最近増えている印象なのが、このタイプです。
強いストレス、疲労、睡眠不足、更年期、生活リズムの乱れなどによって、自律神経や脳の嗅覚を処理する部分が不安定になり、匂いを誤って感じてしまうことがあります。
特に、
- 鼻水や鼻づまりはない
- 風邪をひいた覚えもない
- 画像検査でも異常がない
という場合には、ストレスや自律神経の影響が疑われます。
どんな検査をするの?
まずは、鼻の病気が隠れていないかを確認することが大切です。
耳鼻咽喉科では、
- 鼻の内視鏡検査
- 副鼻腔CT
- アレルギー検査
- 問診
などを行い、慢性副鼻腔炎や鼻茸(ポリープ)、アレルギー性鼻炎などがないかを確認します。
異嗅症は「検査で異常がないから終わり」ではなく、原因を一つずつ除外していくことが重要な病気です。
治療はどうする?
原因によって治療は異なりますが、ストレスや自律神経の乱れが関係している場合には、次のような治療を組み合わせて行います。
嗅覚リハビリ(嗅覚刺激療法)
バラ、レモン、ユーカリ、クローブなどの香りを毎日繰り返し嗅ぐ方法です。
「香りのリハビリ」のようなもので、嗅覚の回復を促す効果が期待されています。すぐに改善するというより、数か月単位でゆっくり続けることが大切です。
生活習慣の見直し
睡眠不足や疲労の蓄積は、自律神経を乱しやすくします。
- 睡眠をしっかりとる
- 軽い運動をする
- 過度な飲酒や喫煙を控える
- リラックスする時間を作る
こうした基本的な生活改善が、症状の軽減につながることもあります。
鼻の保湿
鼻の乾燥は嗅覚に悪影響を与えるため、
- マスク
- 加湿器
- 鼻うがい
なども有効です。
内服治療
症状や体質に応じて、漢方薬などを使用することもあります。
一人で抱え込まず、ご相談ください
異嗅症は、周囲に理解されにくい症状です。
「自分だけがおかしいのでは」と不安になったり、匂いのストレスで気分が落ち込んでしまう方も少なくありません。
しかし実際には、耳鼻咽喉科で相談される患者さんも少しずつ増えている症状です。原因を調べることで治療につながる場合もありますし、「重大な病気ではなかった」と分かるだけでも安心につながります。
気になる症状が続く場合は、一度耳鼻咽喉科で相談してみてはいかがでしょうか。