みみの病気
みみの病気
耳の構造は、耳の穴の外側から鼓膜までの「外耳」、鼓膜の内側でキャッチした音の振動を増幅させる「中耳」、さらに内側で音を脳につなげる「内耳」に分かれています。また中耳から耳管を介して鼻とつながっています。
外耳炎は、耳の中の鼓膜より外側の皮膚に炎症が起こる病気です。痛みや痒み、耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感などの症状を引き起こします。耳の触りすぎが原因であることが多いため、耳掃除を控え、耳を触らないことが主な治療となります。症状が長引く場合は他の疾患の可能性もありますので、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
耳垢(みみあか)は、9割の方では自然に脱落するため耳掃除の必要はありません。ただし、1割ほどの方は耳の構造が原因で耳垢が外耳道内にとどまり続け、耳栓のようになってしまいます(耳垢栓塞)。このような場合、自宅で無理に耳掃除をせず、耳鼻咽喉科での処置をお勧めします。
お子さんが耳の中に小さなおもちゃや豆などを入れてしまったり、大人が綿棒の先などを奥に入れて取れなくなってしまったりすることがあります。そのような場合、耳内を観察し、鉗子やフックで異物を摘出します。
外耳道にカビ(真菌)が繁殖して炎症を起こし、外耳炎と似た症状(痛みや痒み、耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感など)を引き起こします。
治療は外耳道を洗浄し、カビに対する軟膏を塗布します。治りが悪い場合や再発を繰り返す場合もあり、定期的な通院が必要となることもあります。
急性中耳炎は、中耳(鼓膜より奥の空間)で炎症が起こり、痛みや発熱、耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感などの症状を引き起こします。特にお子さんに多いですが、大人でも発症することがあります。主に風邪に続いて起こることが多く、のどの痛みや鼻水、鼻づまりなどの症状が現れた後に耳の症状が出ます。乳幼児では、機嫌が悪くなったり、頻繁に耳に手を当てたりするなどの仕草が重要なサインになります。
軽症の場合は風邪の治療と痛み止めで経過を見ますが、重症の場合は抗生物質の内服や鼓膜切開が必要です。
滲出性中耳炎は、中耳で炎症が起こることで、浸出液が溜まり、聞こえにくさや耳のつまり感などの症状を引き起こします。急性中耳炎に続いて発症することもあれば、急性中耳炎の症状がなく発症することもあります。耳管(鼻と耳をつなぐ管)の働きが弱い場合、特に小さなお子さんや鼻の調子が悪い方では長引くことが多いです。お子さんでは、「呼びかけに反応しない」、「テレビの音が大きい」、「鼻の調子が長く悪い」といったことが重要なサインになります。長期化すると中耳の発達に影響しますので、心当たりがあれば受診をお勧めします。
治療は内服や鼻の治療で様子を見ますが、長引く場合は鼓膜切開や鼓膜チューブ挿入が必要です。
慢性中耳炎は、慢性化膿性中耳炎とも呼ばれ、耳の感染症が長期化している状態です。
中耳の炎症がもととなり鼓膜に穴が開いたまま閉じない状態で、痛みや耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感などの症状を引き起こします。
外傷性鼓膜穿孔は、耳かきで鼓膜を傷つけたり、外耳への強い衝撃が原因で鼓膜に穴が開き、閉じない状態です。症状は慢性中耳炎と似ており、痛みや耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感などが見られます。
治療は、状態に応じて抗生物質の内服や洗浄などを行います。根本的な治療として、鼓膜を閉じる手術が必要になることもあります。
真珠腫性中耳炎は、慢性中耳炎の特殊な病態の一つで、鼓膜の一部が中耳に陥入して真珠のような塊(真珠腫)を形成する状態です。この真珠腫は、周囲の骨や組織を破壊しながら大きくなり、痛みや耳垂れ、聞こえにくさ、耳のつまり感などの症状を引き起こします。進行すると、耳小骨、内耳、顔面神経、硬膜(脳を守る膜)を傷つけ、強い難聴やめまい、顔面麻痺、頭痛などを引き起こすことがあります。
治療の基本は手術です。感染が強い場合は、処置や抗生物質を用いて経過を見ながら手術の時期を決めます。
耳管(じかん)は鼻の奥と耳の奥をつなぐ管で、この管が開閉することで鼓膜の奥の空気圧を調整しています。耳管の働きが悪くなると、耳管狭窄症や耳管開放症が起こり、聞こえにくさや耳のつまり感、自分の声が響いて聴こえるといった症状が現れます。また、中耳炎を引き起こしやすくなることもあります。根本的な治療は難しく、主に対症療法が行われます。
老年性難聴は、年齢とともに聴力が低下する疾患で、聴力検査では両耳ともに高音域を中心に聴力が低下する特徴があります。50歳を過ぎると誰でも難聴が始まりますが、糖尿病などの生活習慣病がある場合、健康な人に比べて難聴が進行しやすくなります。また、中耳炎の治療を十分に受けていなかった方や、長年騒音環境で働いていた方も進行が早いと言われています。
この場合、お薬や手術で聴力が回復する見込みは低く、治療の基本は補聴器の装用です。難聴を放置すると認知症の進行が早まることが知られており、早期からの補聴器装用が推奨されています。
耳鳴りは様々な病気の症状として現れることがありますが、生理的な耳鳴りや原因不明の耳鳴りも存在します。原因となる病気がある場合は、まずその治療を行います。しかし、後遺症として耳鳴りが残ることもあります。
耳鳴りは経過観察することが多いですが、不眠や不快感など日常生活に支障が出る場合は対症療法を行います。
突発性難聴は、原因不明の内耳の炎症が突然発症し、急に耳の聞こえが悪くなる疾患です。ほとんどの場合、片側の耳だけに発症します。難聴に加えて、耳鳴り、耳閉感、めまいなどの症状を伴うことがあります。一度悪化した聴力は徐々に改善することが多いですが、全く改善しないこともあります。再発することは稀です。
治療は発症からおよそ2週間以内であれば、ステロイド剤の内服や点滴を行います。加えて、循環改善剤やビタミン剤の内服治療も行われます。
低音障害型感音難聴は、突発性難聴に似た疾患で、難聴に加えて、耳鳴り、耳閉感、めまいなどの症状を伴います。ただし、症状には波があり、両側または交代性に現れたり、繰り返したりすることが多いです。この病態は突発性難聴よりもメニエール病に近く、低音障害型感音難聴からメニエール病に移行する例もあります。
治療は突発性難聴と同様に、ステロイド剤や循環改善剤、ビタミン剤の使用が主ですが、反復する場合にはメニエール病の治療薬を併用することがあります。
メニエール病は、内耳が水腫を起こすことで、めまいや聴力低下、耳鳴り、耳の閉塞感などの症状を引き起こします。多くの症例では、これらの症状が繰り返し現れます。ストレスが症状を悪化させる要因とされており、予防策として夜更かしを避け、規則正しい食事、十分な水分補給、ストレスの軽減が推奨されています。
治療としては、イソバイドという苦い水薬(ゼリータイプもあります)やめまいを抑える薬の内服が一般的です。
良性発作性頭位めまい症は、内耳にある耳石の一部が外れて三半規管内を動き回ることで、強いめまいを引き起こす疾患です。頭の動きに伴い耳石も動くため、寝返り、起床時、臥床時など頭の位置が変わるときにめまいが強くなります。安静にしていると、数秒から数十秒でめまいは軽減し、通常は難聴や耳鳴りを伴いません。
治療は、耳石の位置を矯正する「めまい体操」が有効です。この体操が効果的でない場合は、症状を緩和する薬を内服します。安静にしすぎると治りが遅くなることがあるため、通常通りの日常生活を送りつつ、危険を伴う行動(例:車の運転)は控えることが推奨されます。
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