2025年8月08日

ある日突然、「顔の半分が動かない」「まぶたが閉じられず目が乾く」「口から水がこぼれてしまう」といった症状が出た場合、それは顔面神経麻痺の可能性があります。
顔面神経麻痺とは?
顔面神経麻痺は、顔の筋肉を動かす神経(顔面神経)がうまく働かなくなることで、表情が作れなくなったり、目や口が閉じにくくなる状態です。
原因はさまざまですが、実は脳梗塞や脳腫瘍などの脳の病気が原因となるものは1割未満と少なく、多くの場合は神経の末端(末梢)でのトラブルによるものです。
多くはウイルスが原因です
特に多いのが、単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスの再活性化によって起こる末梢性の顔面神経麻痺です。これらのウイルスは過去に感染したことがある人の体内に潜んでいて、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めることがあります。
帯状疱疹ウイルスが原因の場合は、めまいや難聴などの耳の症状も一緒に現れることがあり、耳鼻咽喉科での診察が非常に重要になります。
治療と経過について
軽度〜中等度の麻痺であれば、内服薬(ステロイドや抗ウイルス薬)による治療で多くの方が後遺症なく回復します。
しかし、重症の場合には、後遺症が残ったり、「目を閉じようとすると口元が一緒に動いてしまう」などの病的共同運動が出ることもあります。そのような場合には、
- 顔面神経の電気検査(神経の残存機能の測定)
- 顔面神経リハビリテーション
- 必要に応じて手術的治療
などを組み合わせて治療を進めます。
実は、耳鼻咽喉科が対応している疾患です
顔面神経麻痺というと、「脳の病気では?」と不安になり、脳神経外科や神経内科を受診される方も多くいらっしゃいます。確かに、脳血管障害や腫瘍など中枢神経の病気による麻痺もあり、そのような場合はこれらの専門科での診療が重要になります。
一方で、実際に多く見られるのはウイルスなどが原因となる末梢性の顔面神経麻痺で、こちらは耳鼻咽喉科が専門的に対応している領域です。
つまり、顔面神経麻痺は複数の診療科が関与する疾患であり、症状や原因に応じて適切な科での診断・治療が必要です。その中で、耳や鼻、のどの症状を伴う場合やウイルス性が疑われる場合は、耳鼻咽喉科が診察の入り口として適していると考えられます。
早期の治療が、回復のカギを握ります。
- 目が乾く、まぶたが閉じられない
- 口から水がこぼれる、うがいがうまくできない
- 顔の片側の表情が作れない
- 突然、片側の顔だけが動かなくなった
上記のような気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。