2025年5月30日

「耳の下が腫れて痛い」と聞くと、多くの方がまず「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」を思い浮かべるのではないでしょうか。
確かに「おたふく風邪」は、ムンプスウイルスによる感染症で、注意が必要な病気です。5類感染症に分類されており、学校保健安全法でも出席停止の対象とされています。
ただし、耳下腺が腫れる原因は「おたふく風邪」だけではありません。すべてのケースで出席停止が必要になるわけではなく、原因によって対応も異なります。
以下に、耳下腺が腫れる主な病気について簡単にご紹介します。
1. 流行性耳下腺炎(いわゆる「おたふく風邪」)
ムンプスウイルスによる感染症で、主に子どもに多いですが、大人でもかかることがあります。大人のほうが重症化しやすく、まれに精巣炎による男性不妊の原因になることもあります。
【主な症状】
・発熱とともに耳下腺が腫れる(両側が多いが片側のことも)
・顎の下や舌の下の腺も腫れることがある
・約12~24日の潜伏期の後に発症
【診断・治療】
・迅速検査はなく、通常はPCRや血液検査を行いますが、診断には使われないことも多いです
・治療は安静と解熱鎮痛薬などの対症療法のみ。特効薬はありません
・合併症(髄膜炎、脳炎、難聴、膵炎、精巣炎など)に注意が必要です
【出席停止の基準】
・耳下腺や顎下腺、舌下腺の腫れが出てから5日が経過し、かつ全身状態が良くなるまで
【予防】
・ワクチン接種が推奨されています(生後12~15か月、4~6歳の2回)
2. 反復性耳下腺炎
1~6歳ごろの小児によく見られます。耳下腺の腫れを繰り返しますが、痛みは軽めで、発熱も少ない傾向があります。片側または両側の腫れがみられます。
原因ははっきりしていませんが、口の中からの感染や虫歯との関連が指摘されています。成長とともに自然に治まることが多いですが、まれに成人まで続くこともあります。
治療は、抗生物質や解熱鎮痛剤などを状況に応じて使います。
3. 化膿性耳下腺炎
3〜5歳の子どもに多く、高齢者や免疫が低下している人にも見られます。片側性で、強い痛みや発熱を伴うことが多く、口の中に膿が出ることもあります。繰り返すケースでは反復性耳下腺炎との区別が難しい場合もあります。
治療は抗生物質や解熱鎮痛剤による治療が中心です。
4. 耳下腺腫瘍
主に大人に見られ、小児にはまれです。腫れは片側に見られることが多く、痛みや発熱はほとんどありません。腫瘍の性質によって、症状はさまざまです。
5. その他の原因
・耳下腺唾石症
・線維素性唾液管炎
・自己免疫性疾患(シェーグレン症候群、IgG4関連疾患など)
これらの病気は小児では比較的まれです。
まとめ
耳の下が腫れているからといって、すぐに「おたふく風邪」と決めつける必要はありません。出席停止が必要な場合もあれば、そうでない場合もあります。
学校や仕事を休むべきか迷ったときは、まずは耳鼻科を受診して、相談してみるのがおすすめです。