2025年8月22日

最近、溶連菌感染症の流行が長引いています。高い熱や強いのどの痛みで受診される方も多く、耳鼻咽喉科でもよく診断・治療を行っています。
溶連菌感染症とは
溶連菌感染症は「A群β溶血性レンサ球菌」という細菌が原因で起こります。溶連菌はニュースなどで「人食いバクテリア」と恐れられることもありますが、実際には健康な人ののどや皮膚にも存在している常在菌です。多くの場合はのどに感染し、咽頭炎・扁桃炎や、発疹を伴う猩紅熱(しょうこうねつ)といった症状を引き起こします。
学校保健安全法では「第三種学校伝染病」に分類されており、適切な抗菌薬による治療を開始して24時間が経過し、全身状態が良ければ登校・登園が可能とされています。
感染経路と予防
感染は主に「飛沫感染(咳やくしゃみによるしぶき)」や「接触感染(手を介して口・鼻・目に入る)」によって広がります。とはいえ、溶連菌はもともと身近な細菌のひとつなので、過度に神経質になる必要はありません。
ご家庭で感染者が出た場合は、
- こまめな手洗い・うがい
- マスクの着用
- タオルや食器の共用を避ける
- ペットボトルの回し飲みを控える
といった基本的な対策で十分です。
主な症状と診断
溶連菌感染症の典型的な症状は、
- 強いのどの痛み
- 発熱
- 倦怠感、頭痛、食欲不振
などです。鼻水や咳が目立たないことも特徴です。
また、全身に赤い発疹が出て「イチゴ舌(舌の表面が赤くブツブツする)」が見られる場合は「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼ばれます。小児では川崎病との区別が必要になるため、発疹を伴う場合は早めの受診をおすすめします。
診断は迅速検査で行います。のどの奥を綿棒でこすって検体をとり、5分ほどで結果が出ます。
治療
治療は抗生物質の内服が中心です。ペニシリン系やセフェム系の薬を10日間しっかり服用することが大切です。症状が軽くなっても途中でやめてしまうと、再発や合併症の原因になります。あわせて、解熱鎮痛剤やうがい薬を用いて症状を和らげることもあります。
注意が必要な合併症
溶連菌感染症そのものは適切に治療すれば治る病気ですが、まれに感染後数週間たってから合併症を起こすことがあります。たとえば、
- 急性糸球体腎炎(尿の異常・むくみ・血圧上昇)
- リウマチ熱(関節炎・心臓の炎症)
などが知られています。治療をきちんと受け、経過を観察することが大切です。
最後に
「のどがとても痛い」「高い熱が出ている」というときには、溶連菌感染症の可能性があります。耳鼻咽喉科では診断から治療まで対応できますので、気になる症状があるときはどうぞ早めにご相談ください。