2026年3月15日
交通事故や転倒などで頭や顔に強い衝撃を受けたあと、「匂いが分からなくなった」「食べ物の香りを感じない」といった症状が出ることがあります。
このような状態は外傷性嗅覚障害と呼ばれます。
嗅覚障害には、風邪のあとに起こるものや慢性副鼻腔炎によるものなど様々な原因がありますが、外傷性嗅覚障害はそれらに次いで比較的多い原因の一つとされています。
この病気の特徴は
・嗅覚障害の程度が強い(ほとんど匂いが分からなくなることが多い)
・改善まで時間がかかる
・後遺症として残ることがある
といった点です。
なぜ起こるのでしょうか
私たちが匂いを感じるためには、鼻の奥にある嗅神経が匂いの情報を脳に伝える必要があります。
しかし頭部に強い衝撃が加わると、
・嗅神経が損傷する
・脳(特に前頭葉)にダメージが生じる
・頭蓋骨の骨折が起こる
といった原因により、匂いの情報が脳に届かなくなることがあります。
その結果、匂いを感じにくくなったり、全く分からなくなったりします。
どのように診断するの?
診断では、まず事故や外傷の状況を詳しく確認することが非常に重要です。外傷の程度や受傷の時期、匂いの変化がいつから起きたのかなどを丁寧にうかがいます。
また、匂いの感じ方についても
・まったく匂いが分からない
・なんとなく分かる
・本来と違う匂いを感じる
といった症状を確認します。
内視鏡検査
鼻の中を内視鏡で観察し、
・鼻づまりの原因
・粘膜の炎症
・鼻ポリープ
・腫瘍
などがないかを確認します。嗅覚障害の原因が鼻の病気である可能性もあるためです。
画像検査(CT・MRI)
外傷性嗅覚障害では、画像検査が重要な手がかりになります。CTやMRIを行うことで、
・頭蓋骨骨折の有無
・脳(前頭葉)の損傷
・嗅神経の損傷が疑われる所見
などを確認します。
また、副鼻腔炎や腫瘍など、嗅覚障害を引き起こす別の原因がないかを調べる目的でも行われます。
嗅覚の検査について
嗅覚を調べる検査としては、
・静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)
・基準嗅覚検査(T&Tオルファクトメーター)
などがありますが、現在は検査薬の供給の問題などもあり、実施できる施設は限られています。そのため、実際の診療では問診や画像検査などを総合して判断することが多くなっています。
治療について
外傷性嗅覚障害は回復に時間がかかることが多いため、安全性の高い治療を中心に行います。
主な治療としては
・嗅覚刺激療法(匂いを嗅ぐ訓練)
・亜鉛製剤の内服
・漢方薬(当帰芍薬散など)
・ステロイド薬の内服
・ステロイド点鼻薬
などを組み合わせて治療を行います。
最後に
外傷性嗅覚障害は症状が強く、治療が難しいことも少なくありません。しかし、時間をかけて治療を続けることで、少しずつ嗅覚が回復することもあります。
また、検査を行うことで別の原因が見つかり、治療につながるケースもあります。
事故や転倒のあとに「匂いが分かりにくくなった」「味が分かりにくくなった」と感じる場合は、一度耳鼻咽喉科でご相談ください。